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京都霊山護国神社 維新の道復旧工事

2025.08.28

ブログ 施工事例 造園部

こんにちは、造園部の陳です。
今回紹介したいのは、東大路通りから京都霊山護国神社へ向かう参道「維新の道」前にある庭です。
2年前、坂の上にホテルが建つことになり、工事用の大型車が頻繁に通るため、周りの玉垣と石灯籠を外すことになりました。

ホテル開業にあたって、このエリアの復旧工事も進められていました。
こちらはRIKCADで作成した復旧イメージ図です。

まず、【石灯籠の復旧】から始まります。

右側の石灯籠と平行になっているかどうかを確認してから据えました。

続いて、今回の施工で最大のポイントは、護国神社様の所有物である重量4.7トンの手水鉢を斜面のある地形に正確に据え付けるという工程です。
人や車の流れを妨げず、また景観を守りながら工事を進めるために、真っ暗闇の夜中に大型クレーンで吊り上げ作業を実施しました。周囲が静まり返った真夜中で、傾斜地ということもあり、通常以上に緊張感が高まりますね。
施工は昨年の11月中旬で、夜になると日中よりもだいぶ気温が下がっていたのですが、 緊張感や石の重みで皆、汗ダラダラです。

維新の道に行かれたことがある方はご存じでしょうが、ここは急な上り坂となっているので、クレーンのアウトリガーを設置するだけで大変な作業でした。

夜間の施工は日中の施工に比べて難易度が高い分、計画・準備・技術力のすべてが試される現場です。

そして、翌日から手水鉢周りの板石を据え付ける作業を始めました。
今回の板石据え付けの主な目的は、斜面に据え付けた手水鉢へ、自然にたどりく動線をつくることです。

この施工で最も大変だったのは、板石のレベル(高さや勾配)を正確に取ることでした。
斜面という地形は、見た目以上に起伏が複雑で、わずかなズレが「歩きづらさ」や「不自然な見た目」につながります。

施工時に特に意識していた点は次の通りです:

  • ・一枚一枚の高さをミリ単位で調整する必要がある
  • ・板石同士がバラバラに見えないよう、流れと傾斜を統一
  • ・水鉢へ向かって自然に視線と足元が下がっていくラインづくり

作業中は何度も水平器と水糸を使い、一度据えた石を「やっぱり数ミリ下げよう」と、何度もやり直す場面もありました。また、ここで使用しているのは、護国神社様の板石古材で、既製の石材と違い、古材の裏面は不規則でデコボコしており、レベル調整がとても難しい。さらに、一枚一枚が非常に重く、持ち上げながら微調整するのも一苦労でした。

そうした地道な調整を重ねることで、足元からも歴史と時間の積み重なりが感じられ、歩いても視覚的にも“心地よい”アプローチラインを実現することができました。

手水鉢と板石の据付が終わり、最後に加えたのが植栽です。

やはり、みどりが入ると空間の雰囲気が一気に柔らかくなりますね。
石だけではどこか緊張感のある景色も植栽が加わることでやさしさが生まれました。

手水鉢の周囲にはセキショウやシダなどの下草を配して、落ち着きのある和の趣を演出します。
ポイントでモミジを添え、季節ごとに移ろう風景を楽しめるようにしました。

この現場で印象的だったのは、ある職人さんの言葉でした。

「植栽は基本まっすぐ植えるけど、場所によっては少し前に倒して見せると、自然に見えるんや」

たしかに、公園や公共施設ではすべての木がきれいにまっすぐ植えられています。
それはそれで美しいですが、今回のような個人邸の庭や自然な景を求める空間では、ほんの少しだけ前傾に見せることで、風に吹かれているような“柔らかい印象”になります。

その感覚は図面にも教科書にも書かれていない、現場で培われた職人の“目”と“勘”によるものですね。

今回の施工場所には、もうひとつだけ…
毎日私たちの背中を押してくれた風景がありました。

それは、振り返れば五重塔と京都タワーが並んで見えるという、まさに京都ならではの眺め。そして、その背後に夕陽がゆっくり沈んでいく景色です。

作業の合間、ふと手を止めて空を見上げると、オレンジ色に染まる空とシルエットになった塔が重なり、
一瞬、時間が止まったような気さえしました。
「この景色が毎日見られるなんて、贅沢やなぁ」

また、アプローチの勾配の段差解消のため、一部にシバザクラ(芝桜)を植えました。
芝桜は、春にはピンクの小さな花が地面を覆い、まるで花の絨毯のように庭を明るく彩ってくれます。

庭は、完成して終わりではありません。石も木も草花も、季節や時間とともに表情を変えながら成長していくものです。

春には芝桜が咲き、
夏には手水鉢に木陰が映り、
秋にはモミジの紅葉を彩り、
冬には枝のシルエットが景色を引き締める。
この庭が、一年を通して豊かな“表情”をもつ風景になってくれることを願っています。

斜面に据えた手水鉢と、そこへ導く古材の板石。そして、それらを包み込む植栽と、時間とともに変わっていくモミジと芝桜。どれもが、職人たちの知恵と手仕事によって生まれた、“その場所にしかない庭”です。

日々変化する景色の中で、ふと立ち止まり、季節を感じられるような庭になれば、私たちにとってこれ以上の喜びはありません。

斜面という一見難しい立地ですが、工夫次第で「庭の見せ場」へと変えることができました。
これからも“その場所にしかない庭”を丁寧に作っていきます。


We recently completed a unique garden project on a sloped site in Kyoto.
A large stone water basin was carefully installed, followed by the placement of reclaimed stone slabs to create a natural approach to the basin. Each slab required precise leveling, as their irregular shapes and heavy weight made the work especially challenging.

Finally, planting work brought softness and life to the scene. The addition of greenery made the stone and water feel more natural, while the Shibazakura (moss phlox) will provide seasonal beauty—bright flowers in spring and subtle changes throughout the year.

From the site, we could even see the Five-story Pagoda and Kyoto Tower glowing in the sunset, making this project unforgettable.
This garden will continue to change its expression with the seasons, offering a space of quiet charm and natural harmony.


我們在京都「維新之道」前完成了一個特別的庭園。

它位於京都名勝「高台寺」的附近,在段差相當大的傾斜地上,由於白天觀光客眾多我們首先在夜間進行了大型石製水缽的放置作業,再用古材板石鋪出通往水缽的動線。由於石材不規則又沉重,必須仔細地調整爭水平,因此增加了許多施工上的難度。

最後加入植栽與芝櫻,讓空間更柔和,也能隨著季節展現不同風貌。
在這裡,還能遠望五重塔與京都塔的夕陽景色,是一個隨時間而變化、充滿魅力的庭園。
如果你對坂本龍馬有興趣,請一定要來維新之道看看,也順道看看我們的庭園正在經歷哪個季節。